F 鵜澤雄一 vs 吉森奨 by LMCCカバレージ班

鵜澤:ジェイスカイテンポバーン

吉森:緑信心タッチ黒


去年に引き続き、鵜澤vs三原となった決勝戦。

椅子に座っている人間こそ吉森だが、デッキには殿堂プレイヤー三原の血が流れている。

と、書くと吉森が虎の威を借りる狐のように聞こえるが、吉森自身2度のPT参加経験があるプレイヤーである。

弱かろうはずがない。デッキもプレイも一級品、戴冠まで障害はあと1つ。


2年ほど前はリミテッドが苦手な構築系プレイヤー、との認識だった鵜澤だが、最早その評価は過去のものとして年表に刻むだけとなりつつある。

その苦手なドラフトを克服して優勝した去年、まさか今年も決勝のテーブルに着いたとなればもう実力に疑いはないだろう。

吉森の優勝を阻む障害としてこの男が立ちはだかるのも頷ける。最後の1つにして最大の難関となるだろう。


鵜澤から見れば吉森も連覇までの最後の障壁。

壁をブチ破るのは果たして。



Game1

両者マリガン。

それが響いてかターニングポイントとなるマナ・クリーチャーをプレイできず《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》連打からスタートする吉森。

この間に好きなだけ攻めたい鵜澤だが、クロックが用意できず片方を《かき立てる炎/Stoke the Flames》で焼き払うに留まる。


しかもこれを優先したため5ターン目に《嵐の息吹のドラゴン/Stormbreath Dragon》をプレイ

することができず、《開花の幻霊/Eidolon of Blossoms》のドローを眺めるだけとなってしまう。

アドバンテージエンジンである《開花の幻霊/Eidolon of Blossoms》が通ったことでカウンターはない読んだか、端から順にパワーカードを叩きつけていくお得意タイムの始まり。

《書かれざるものの視認/See the Unwritten》で《女王スズメバチ/Hornet Queen》を出し《世界を喰らう者、ポルクラノス/Polukranos, World Eater》で《ゴブリンの熟練扇動者/Goblin Rabblemaster》を睨む。

ボス蜂を《稲妻の一撃/Lightning Strike》で、《世界を喰らう者、ポルクラノス/Polukranos, World Eater》は《ジェスカイの魔除け/Jeskai Charm》で

少しずつズラしながらゴブリントークンで小突いていき《嵐の息吹のドラゴン/Stormbreath Dragon》まで繰り出した鵜澤だが、

2匹目の《女王スズメバチ/Hornet Queen》がその毒針を見せると敗北を認めた。


鵜澤 0-1 吉森

 

 

 

 

 

 

 

 

 



連覇を目指す鵜澤

Game2

吉森はマナ・クリーチャーを、鵜澤は《カマキリの乗り手/Mantis Rider》をそれぞれプレイしていく1本目とは違った展開となった2本目。

1発分のダメージを《ナイレアの信奉者/Nylea's Disciple》で取り戻すと《破滅喚起の巨人/Doomwake Giant》でお伺いを立てる吉森。

鵜澤は小考の後《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke》で却下すると《かき立てる炎/Stoke the Flames》《ジェスカイの魔除け/Jeskai Charm》

《稲妻の一撃/Lightning Strike》と打ち込んで《女王スズメバチ/Hornet Queen》の上からダメージを重ね吉森のライフを2まで落とし込む。

鵜澤の土地が全て起きたターン、敗北を覚悟したように動きが止まった吉森だったが、静かにターンを返した鵜澤を見て一転目に希望が宿った。


――勝った


丁寧に場を整えるとクリーチャーをすべてレッドゾーンへ……送り込もうとしてふと疑問が頭をよぎる。



どう考えても鵜澤は負けている。

火力を引いているならとっくに打っているはず。

吉森の打点は致死量。

なぜ鵜澤は投げない?まだ逆転の目が?


《跳ね返す掌/Deflecting Palm》


吉森が勝つためには総攻撃が必要で、そうなればパワー2のクリーチャーも加わらなければならない。

ここで《跳ね返す掌/Deflecting Palm》が放たれると、鵜澤は生き残り代わりに吉森の身が砕ける。

これに気付いた吉森はパワーが1のクリーチャーのみで攻撃し、優勝を1ターン先送りした。


結論から言えば鵜澤は《跳ね返す掌/Deflecting Palm》を持っていなかった。

引いたのは土地で何の役にもたたなかったが、鵜澤はゲームを投げなかった。

単純に最後までプレイする意思もあっただろう、しかし同時に鵜澤は信じていた。


吉森が一線級のプレイヤーであることを、《跳ね返す掌/Deflecting Palm》を警戒してくれることを。


あるいは相手がコンピューターであれば総攻撃により鵜澤は即座に敗北していただろう。

あるいは吉森が目先の勝利に目がくらんだとしても同じだっただろう。

人間同士だからこそ発生した1ターン。

吉森が一線級のプレイヤーだからこそ生じた隙。


残念ながら鵜澤はこの隙を生かせなかった。

あまりに細い綱渡りによってたどり着いた向こう岸にも回答はなく連覇は降りしきる雨にかき消された。


結果として吉森が一人で怯えて勝ちを遠のかせただけに見えるが、ここにこそマジックの醍醐味があると私は考える。


人間だからミスをするし、人間だから機械で拾えないだろうミスを拾える。

対システムでなく、血が通い肉を持ち心のこもった人間同士だからこそマジックは楽しいと思うし、だからこそ、QFの菅谷の行動は尊いとも思う。

勝てば嬉しい、負ければ悔しい。悔しいけど、自分より強かった相手を讃えよう。

今日は負けたが明日は勝つと、だからそれまで強くあってくれと。そんな弱いやつに俺は負けてないと。


敗者をなじるなかれ。


勝者を、吉森奨を讃えよう。


おめでとう吉森!!


鵜澤 0-2 吉森

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2014年LMCC優勝、吉森