Round5:「プロプレイヤーの強さ」三原槙仁(千葉) vs. 奥田賢史郎(ミスターバナナ) 

By Yuya Hosokawa

  千葉の魔王、世界王者、殿堂…数々の栄誉あるあだ名を持つゴールド・プロプレイヤー三原槙仁は、勿論LMCCの権利を所持している。殿堂入りを1つのゴールとせずにマジックを楽しみ、プロツアーで活躍し続けるその姿は、まさしくプロプレイヤーの鑑だ。現在も一線級で活躍し続けるプロプレイヤーがこうして足を運ぶのも、LMCの魅力の1つといえよう。

 

  そんなLMCで育ち、腕を磨き、その力を見せ始めたプレイヤー、それが三原と対峙している奥田賢史郎だ。

 

 現在奥田が所持しているLMCポイントは21点。なんと優勝4回に相当するポイントを持っている。今LMCで最もホットなプレイヤーの1人と言っても過言ではない。


 飛ぶ鳥を落とす勢いの奥田の前に、プロプレイヤーが、三原が、立ちはだかる。


GAME1


 

 《乱脈な気孔/Shambling Vent(BFZ)》から《汚染された三角州/Polluted Delta(ONS)》で島をサーチして《搭載歩行機械/Hangarback Walker(ORI)》と、エスパーカラーのデッキであることを示した三原。


 対して奥田は《神秘の僧院/Mystic Monastery(KTK)》から《汚染された三角州/Polluted Delta(ONS)》と、ダークジェスカイを思わせるセットランド。現スタンダードほど、2ターン目のセットランドまででデッキがわからない環境はないだろう。


 現に、奥田のデッキはダークジェスカイではなかった。三原が《強迫/Duress(DTK)》で手札を覗くと、そこには2枚のクリーチャーが。《龍王シルムガル/Dragonlord Silumgar(DTK)》と《龍王オジュタイ/Dragonlord Ojutai(DTK)》だ。そして…他は全て土地だ。脅威がないことを確認した上で三原は、《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy(ORI)》を戦場に送り出す。


 ここまで全て手なりのようにノータイムで行っている三原だが、《強迫/Duress(DTK)》をいつ唱えるか、2ターン目に出すべきは《搭載歩行機械/Hangarback Walker(ORI)》か、《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy(ORI)》か、というところで様々な選択肢が既に存在している。最適解を最速で見つけるのがプロだ。


 奥田はドロー、セット、ゴー。


 メインフェイズで《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy(ORI)》のルーターを行った三原は奥田に倣い、セット、ゴー。奥田のアクションはまたもなし。


 変身確定のルーターを行った三原は捨てるカードで悩む。「捨てるものがない!」と言いつつもやがて《命運の核心/Crux of Fate(FRF)》をディスカードする。悩むまでも無いように思えたが、三原にとっては《命運の核心/Crux of Fate(FRF)》はそこそこ重要なカードだったようだ。《強迫/Duress(DTK)》で見た相手の《龍王シルムガル/Dragonlord Silumgar(DTK)》に対して、必要な可能性が出てくるかもしれない、と考えているのだろうか。


 この次のプレイはほぼノータイム。《龍王オジュタイ/Dragonlord Ojutai(DTK)》召喚。


 これは奥田の出した《龍王オジュタイ/Dragonlord Ojutai(DTK)》と相打ちになる。優位を広げるべく三原は《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound(ORI)》で《強迫/Duress(DTK)》を使いまわすと、再度公開された奥田の手札はなんと《龍王シルムガル/Dragonlord Silumgar(DTK)》と土地のみ! 奥田はあれから土地しか引いていなかったのだ。


 諦め気味の奥田は《龍王シルムガル/Dragonlord Silumgar(DTK)》を唱え、《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound(ORI)》を奪い取る。《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound(ORI)》のテキストを確認した三原は、奥田の墓地に、マイナス能力の対象がないことを確認すると、コントロールの許可を与え、ターンエンドに《完全なる終わり/Utter End(KTK)》で除去。プラス能力を起動してくれたら儲けものだったが、そこはミスターLMC街道をポールポジションで突っ走る奥田。三原の誘いには乗らない。


 それでも奥田の不利な状況は根本的に変わらない。《時を越えた探索/Dig Through Time(KTK)》が三原に有効牌を供給し、間もなく《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar(BFZ)》と《黄金牙、タシグル/Tasigur, the Golden Fang(FRF)》が第1ゲームを終わらせた。


三原1-0奥田



GAME2


 

 マリガンとなってしまった奥田が《精霊龍の安息地/Haven of the Spirit Dragon(DTK)》セットという立ち上がりに対し、三原は《乱脈な気孔/Shambling Vent(BFZ)》、平地、沼、《大草原の川/Prairie Stream(BFZ)》という手札からしっかりと《大草原の川/Prairie Stream(BFZ)》をセットする。《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy(ORI)》を引いた時の事をきちんと考えているのだ。


 勿論そんな都合のいいドローはなく、三原は《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy(ORI)》を引くことはできなかった。だが、三原にとって更に都合の良い事が起きていた。


 奥田の土地が1枚のまま止まってしまったのである。


 2ターン土地が1枚のままの奥田がようやく2枚目の土地となる《乱脈な気孔/Shambling Vent(BFZ)》を置いた返しに、三原は既に《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar(BFZ)》に辿り着いた。


 それでも奥田は諦めることなく《オジュタイの語り部/Orator of Ojutai(DTK)》を唱え、3枚目の土地を手に入れると、次のターンには待望の4マナ目を入手し、《雷破の執政/Thunderbreak Regent(DTK)》を戦場に繰り出す。


 だが三原は既に詰め将棋を頭の中で終えていた。


 《黄金牙、タシグル/Tasigur, the Golden Fang(FRF)》、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar(BFZ)》で攻撃した三原は、除去を持っているが打つことなくターンを終える。


 そして奥田のターンエンドに《時を越えた探索/Dig Through Time(KTK)》。これは《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke(KTK)》で打ち消されるが、三原は意に介さずに自分のターンに入り、まず《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar(BFZ)》の忠誠値を7へと引き上げる。


 そして合計6点のダメージで《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar(BFZ)》が落とされないようにしてから、《雷破の執政/Thunderbreak Regent(DTK)》に《完全なる終わり/Utter End(KTK)》。


 事故に陥った相手にも油断せずに完璧なプレイを見せた三原が、危なげなくスタンダード全勝を飾った。


三原2-0奥田



 ゲーム自体は一方的なマナフラッド、マナスクリューとあっけないもので、奥田としてはとても残念なものに終わってしまった。


 だが全体を通して三原の細かいケアがとても光るゲームであった。


 「プロは上手いプレイをたくさんするから勝つのではなく、ミスをせず、当たり前のことを当たり前に行うから勝つ」ということを、三原は言葉ではなくプレイで魅せてくれた。