決勝:三原槙仁(千葉) vs. 増野良輔(千葉)

 By Yuya Hosokawa

 14回戦の予選ラウンド、そして準決勝が終わり、16回戦の末についにプレイヤーは2人だけとなった。


 まずは東に座る三原槙仁。ゴールドレベルプロ、マジック殿堂入り、世界王者。いくつもの二つ名を持つが、その全てが三原の実力を示している。


 使用デッキはエスパーミッドレンジ。エスパーコントロールではないのか、と思うかもしれないが、そのリストを見て納得。全体除去はメインに《命運の核心/Crux of Fate(FRF)》が1枚だけ。攻撃する気が随所から伝わってくるこのデッキは、これはまさしくエスパーミッドレンジだ。


 そんな三原と決勝を戦うのは、ミスターLMCを手に入れたばかりの増野良輔。宿敵萩原を2-0で下した増野のデッキは、《獣呼びの学者/Beastcaller Savant(BFZ)》が入っていることからわかるように、デッキのほとんどがクリーチャーで構成されているダークティムールだ。


 《爪鳴らしの神秘家/Rattleclaw Mystic(KTK)》、《獣呼びの学者/Beastcaller Savant(BFZ)》といったマナクリーチャーから出すのは《雷破の執政/Thunderbreak Regent(DTK)》、《放浪する森林/Woodland Wanderer(BFZ)》、《氷瀑の執政/Icefall Regent(DTK)》に加え、そして…《空乗りのエルフ/Skyrider Elf(BFZ)》という独創的なデッキだ。そしてなんとこれだけ生物が採用されている中で、《凶暴な拳刃/Savage Knuckleblade(KTK)》が1枚も入っていないのだ。


 両者とも、環境最強と呼ばれているアブザンアグロを倒しての決勝進出となる。


 環境はアブザン1択ではないことを、2人は証明した。


 後、証明しなければならないことはただ1つ。


 どちらが最強か、だ。


 

GAME1


 

 LMCC最後のマッチは、ダブルマリガンスタートとなった三原の《汚染された三角州/Polluted Delta(ONS)》で始まった。


 《大草原の川/Prairie Stream(BFZ)》から《吹きさらしの荒野/Windswept Heath(ONS)》で森をサーチした増野は《爪鳴らしの神秘家/Rattleclaw Mystic(KTK)》を唱える。


 ここまでフェッチランドを並べている三原。ついにそのうち1枚、《汚染された三角州/Polluted Delta(ONS)》をサーチして《強迫/Duress(DTK)》を打つ。増野の手札は《空乗りのエルフ/Skyrider Elf(BFZ)》と《獣呼びの学者/Beastcaller Savant(BFZ)》、そして《放浪する森林/Woodland Wanderer(BFZ)》。渋い顔をして三原はターンを返す。


 《雷破の執政/Thunderbreak Regent(DTK)》をドローした増野はまず見えている《空乗りのエルフ/Skyrider Elf(BFZ)》から。3/3で戦場に呼び出し、《爪鳴らしの神秘家/Rattleclaw Mystic(KTK)》は攻撃に参加する。


 三原は《溢れかえる岸辺/Flooded Strand(ONS)》をセットランド。そして場に3枚並んだ《溢れかえる岸辺/Flooded Strand(ONS)》を全て生贄に捧げ、島と《大草原の川/Prairie Stream(BFZ)》2枚をサーチ。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar(BFZ)》でトークンを生み出す。


 4/4で《空乗りのエルフ/Skyrider Elf(BFZ)》を出さなかったことが裏目に出てしまった増野。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar(BFZ)》の前に少考し、結局《放浪する森林/Woodland Wanderer(BFZ)》を場に出し、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar(BFZ)》の忠誠値を3つ下げるのみ。


 《龍王オジュタイ/Dragonlord Ojutai(DTK)》、《忌呪の発動/Foul-Tongue Invocation(DTK)》、《時を越えた探索/Dig Through Time(KTK)》と手札にあり、墓地は5枚。土地は場に4枚。悩む三原。


 だがすぐに《時を越えた探索/Dig Through Time(KTK)》を打つことに決めた。5枚をリムーブし、3マナを支払う。


 三原が選んだのは《搭載歩行機械/Hangarback Walker(ORI)》と《吹きさらしの荒野/Windswept Heath(ONS)》。どちらもプレイしてターンを終了する。


 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar(BFZ)》は葬られ、《放浪する森林/Woodland Wanderer(BFZ)》はプレイヤーに。《雷破の執政/Thunderbreak Regent(DTK)》がこの恐ろしい増野軍勢に加わる。


 《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy(ORI)》をドローした三原。《龍王オジュタイ/Dragonlord Ojutai(DTK)》も手札にあるが、《忌呪の発動/Foul-Tongue Invocation(DTK)》も構えられる《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy(ORI)》を優先することに。


 そして増野の攻撃に合わせて《忌呪の発動/Foul-Tongue Invocation(DTK)》をプレイ。だが増野の手札からこぼれたのは《頑固な否認/Stubborn Denial(KTK)》。

 まずは優勝に向けて、増野が大事な後手ゲームを勝ち取った。


 

増野1-0三原



GAME2



 またしてもマリガンを強いられた三原。占術を上にするかどうかたっぷり30秒ほど悩み、上に残すことに。


 ゲームは、そんな三原の《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy(ORI)》が初動となった。遅れを取るわけには行かない増野、《爪鳴らしの神秘家/Rattleclaw Mystic(KTK)》で応える。


 三原の3ターン目はセットランド以外にアクションはなし。増野の繰り出す《獣呼びの学者/Beastcaller Savant(BFZ)》はスルーし、ターンエンドに《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy(ORI)》を起動。ディスカードするもので悩み、長考の末《搭載歩行機械/Hangarback Walker(ORI)》を捨てる。


 自分のターンに入り、三原はまず《汚染された三角州/Polluted Delta(ONS)》を起動。そして《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy(ORI)》を変身させる。


 増野は《空乗りのエルフ/Skyrider Elf(BFZ)》を3/3で唱えて《獣呼びの学者/Beastcaller Savant(BFZ)》で《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound(ORI)》を攻撃してターン終了。三原はエンド前に《時を越えた探索/Dig Through Time(KTK)》を打つ。増野は2マナを立てているがこれを許可。


 ここを好機と見て三原は《龍王オジュタイ/Dragonlord Ojutai(DTK)》をプレイするが、増野の手札には《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke(KTK)》があった。

 《時を越えた探索/Dig Through Time(KTK)》が通ったときにカウンターがないと思っていたであろう三原は、わずかに眉をひそめた。


 これにより三原はタップアウト。


 増野はクリーチャーを全て《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound(ORI)》に。更に《雷破の執政/Thunderbreak Regent(DTK)》を追加。とにかく増野の手札が完璧すぎる。


 三原が一縷の望みを賭けて打った《命運の核心/Crux of Fate(FRF)》は《頑固な否認/Stubborn Denial(KTK)》。

 そして三原が投了するその瞬間まで、ずっと手札に2枚目の《頑固な否認/Stubborn Denial(KTK)》を握り締めていたのだった。



増野2-0三原



 三原槙仁に貫禄のストレート勝ちした増野。その豪腕もさることながら、《時を越えた探索/Dig Through Time(KTK)》をスルーして《龍王オジュタイ/Dragonlord Ojutai(DTK)》をカウンターした時のような、堅実なプレイが随所に光っていた。


 LMCC優勝! おめでとう! ミスターLMC増野良輔!