Round3 : 「期待を機体に乗せて」 長谷川 隼也(津田沼) vs. 有田 賢人(津田沼)

by Yuya Hosokawa

ワールドマジックカップ。世界選手権の団体戦に変わる新たなイベントとして2012年から始まった大会だ。各国のプロポイント1位のプレイヤーと、3名の各地の予選を抜けたプレイヤーの4人でチームを組み、国旗を背負い戦う。まさにMTGのワールドカップ。

そんなワールドマジックカップと日本の相性は悪かった。日本がマジック強豪国ということは揺ぎ無い事実だが、2012年、2013年、2014年の3年間、日本は初日敗退だったのだ。

 

だからこそ昨年のベスト8は、日本中が湧き上がった。決勝ラウンドで敗退してしまったとはいえ、「ワールドマジックカップで勝てない」というジンクスをついに打ち破った。

 

となれば、今年こそ期待がかかるだろう。「優勝」という2文字が。

 

そしてそんな国民の期待と日の丸を背負う4人の戦士。その内の1人が、この有田 賢人だ。

 

白赤人間を駆り、幾多のバントカンパニーをなぎ払い日本代表の座を射止めた有田は、千葉出身のマジックプレイヤーで、このLMCで育ち、その腕を今も磨いている。

今回使用するのも白赤機体アグロと、白赤人間を彷彿とさせるデッキだ。

 

有田と対峙するのは、こちらも千葉ではおなじみの長谷川 隼也。

勿論千葉のMTGプレイヤーであり、このLMCでは常連。更に有田と同じ津田沼のプレイヤーということで、トラッシュトークが早速弾む。

同郷の長谷川は、デッキは有田とは対照的だ。赤白青、いわゆるトリコロールカラーのコントロールデッキを使用しており、新戦力として《ドビン・バーン》を手に入れている。

 

ビート対コントロール。コントロールが有利というのが定説ではあるが、カラデシュ産の機体を擁する有田のデッキ。

果たして勝負の行方は。


GAME 1

 

 

平地から《模範的な造り手》、2ターン目に《屑鉄場のたかり屋》を出しながら攻撃と、ロケットスタートを切る有田。

対する長谷川も《さまよう噴気孔》、平地と静かにゲームを始めるも、きちんと《蓄霊稲妻》を《模範的な造り手》に打ち込む。

 

有田はエンジン全開だ。

《発明者のゴーグル》をキャストすると2枚目の《模範的な造り手》を唱え、《鑽火の輝き》で失うも気にすることなく《発明者の見習い》をキャストする。これももちろん工匠だ。

 

《発明者の見習い》に2枚目の《蓄霊稲妻》を浴びせた長谷川だが、状況はかんばしくない。《屑鉄場のたかり屋》が《発明者のゴーグル》を装備して攻撃してくると、これでライフは早くも4に落ち込んでしまう。

 

黒マナを立たせる有田。除去されてもすぐ場に戻るため、これを対処する手段は少ない。

だが長谷川は解決策を持っていた。アーティファクトを追放する《先駆ける者、ナヒリ》だ。

 

このプレインズウォーカーに対処できない有田。手札から更なる《屑鉄場のたかり屋》をプレイするが、長谷川が《ドビン・バーン》を唱えると状況は徐々に悪いものとなっていく。

 

攻撃しても1点しか入れることができず、殴ろうものならば《先駆けるもの、ナヒリ》の餌食。動けない有田は解決策を手札に持っていない。それどころか、手札は全て土地なのだ。そしてこの2体のプレインズウォーカーを前にしてドローは、またしても土地。

 

そして有田が土地を引いている間に長谷川は《ドビン・バーン》と《天才の片鱗》で手札を肥やす。

 

ようやく引いた《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》が《否認》で打ち消されたところで、有田は第2ゲームに臨むことに決めたのだった。

 

 

長谷川1-0有田

GAME 2

 

 

第二ゲームも構図は変わらない。攻めるのは有田、守るのは長谷川だ。

 

2ターン目に唱えた《屑鉄場のたかり屋》はすぐに《断片化》され、《模範操縦士、デパラ》には《光輝の炎》。4ターン目にしてまだライフが20と、長谷川にとって理想の展開だ。

 

だが有田の唱えた《密輸人の回転翼機》には頭を悩ませる。何せ墓地には既に場に戻ってくることが確定している《屑鉄場のたかり屋》があるのだ。使い捨て前提で《ドビン・バーン》を唱え、マイナスを起動する。

 

このフルタップの隙を突く有田。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》をキャストし、トークンを生み出し、更にその2/2が《密輸人の回転翼機》に搭乗。《ドビン・バーン》を排除しつつ本体にもダメージを与える。

 

この《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を除去する手段を持たない長谷川は《さまよう噴気孔》を置いてターンを返すのみ。

 

4マナを立てる長谷川に有田は悩む。どんな除去があるか、何をされるか。慎重に考え、トークンで《密輸人の回転翼機》に搭乗し、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》含めてフルアタックすることに。

しかし、長谷川はこの《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》に対処する《停滞の罠》を持っていた。仕方なく有田は6点だけを与え、《模範的な造り手》をプレイする。

 

長谷川の手からは2枚目の《ドビン・バーン》。今度はプラス能力。有田はこれを場だけで処理し、目の前に立つ2マナを見つめて、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》は出さずにエンド。

 

対処しなければならないものが多すぎる長谷川は、《先駆けるもの、ナヒリ》で《密輸人の回転翼機》を追放しつつ、盤面の沈静をはかるべく除去を打ち込む。ライフをなんとか守った長谷川だが、その大小としてフルタップになってしまう。

そして前述の通り、有田の手には《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》が。

 

念のためドローはしてみるものの、長谷川には次のターンを生き残る算段はなく、勝負の行方は最終ゲームにもつれることになった。

 

 

長谷川1-1有田

 

GAME 3

 

 

長谷川は3ゲームとも《さまよう噴気孔》からゲームを始めるも、3ターン目に手札に土地がなかったようで、メインで《予期》を唱えてなんとか土地を確保する。

 

一方の有田は、1ターン目こそタップインスタートだったが、次のターンには《スレイベンの検査官》、《発明者の見習い》と並べ、一気にプレッシャーを与える。

 

だが3ターン目に唱える呪文のない有田。《発明者の見習い》が弱くなるも、仕方ないといった様子で手がかりを生贄に捧げてカードを引きにいく。

 

状況が良くないのは長谷川も同じだった。というより、長谷川の方がより深刻だった。ビートダウンに強い《金線の使い魔》を並べるのだが、戦場には土地が一向に増えていかないのだ。そして、有田が着地させた《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》が、更に長谷川の頭を悩ませる。

 

とにかく土地を引かなければ始まらない長谷川のデッキ。ようやく4枚目の土地を引いて《ドビン・バーン》をプレイするも、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》の攻撃から《ドビン・バーン》を守るために、《金線の使い魔》をチャンプブロックに使わざるを得なくなってしまう。

 

なんとかダメージを抑えたい長谷川は《密輸人の回転翼機》に《断片化》を打ち込み、3マナを立てる。勿論それらには白白が含まれており、《停滞の罠》が有田の脳裏にはちらつく。

 

もちろん有田は《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を突っ込ませずに紋章を獲得。更に《発明の天使》で霊気装置トークンを生み出すと、《ドビン・バーン》を落としつつ、本体にもダメージを与える。

 

この一瞬でライフが消し飛んでしまうほどの盤面を《光輝の炎》で流す長谷川。現在ライフは22と、一見解決策になっているかのように思えたが、戦場には《模範操縦士、デパラ》と《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》が残っている。

 

そしてこの軍勢に《高級警備車》が加わり、全てがレッドゾーンへ。

 

このターンだけで17点のダメージを受けた長谷川。ライフは僅かに残ったが、そのライフはただ残っただけだった。

 

 

長谷川1-2有田

 

 

次々とクリーチャーを機体に乗せていき、果敢に攻撃を仕掛ける有田の姿は、日本代表となったあの瞬間と重なって見えた。

 

ワールドマジックカップで躍動する有田に期待しよう。