Final 奥田賢史郎(チームバナナ)vs. 藤井大(千葉)

LMCC2018。

ゴルガリ・ミッドレンジで会場はあふれかえっていた。

三原 槙人をはじめとした多くのプレイヤーは、イクサランの相克生まれの探検クリーチャーとラヴニカのギルドから入った最高品質の除去である《暗殺者の戦利品/Assassin's Trophy(GRN)》、そしてプレインズウォーカーの組み合わせを喜んで使っていた。

ビートダウンには除去と良質なクリーチャー、コントロールにはプレインズウォーカーに加えてキラーサイドカードと、隙のないゴルガリのことを「事故らない(前環境の)赤黒みたいなもの」と呼ぶ者さえいた。

 

だがこの決勝の舞台には、ゴルガリの姿はない。もっと言えば、ギルドの姿すらない。

 

ここには、たった一種の氏族だけが立っている。

 

まずはスイスラウンド首位通過となる奥田。

持ち込んだデッキは赤白青、いわゆるジェスカイカラーのコントロールデッキ。除去と打ち消しをふんだんに詰め込み、《ドミナリアの英雄、テフェリー/Teferi, Hero of Dominaria(DOM)》と《ウルザの後継、カーン/Karn, Scion of Urza(DOM)》がそれをサポートする、由緒正しきコントロールだ。準々決勝では赤単を、準決勝ではスゥルタイミッドレンジを、プレインズウォーカータッグの力をいかんなく発揮して退けてきた。

 

そしてジェスカイコントロールに対するは、ジェスカイエンジェルを駆る藤井。

同じジェスカイカラーだがこちらはミッドレンジ。《輝かしい天使/Resplendent Angel(M19)》、《黎明をもたらす者ライラ/Lyra Dawnbringer(DOM)》、そして《正義の模範、オレリア/Aurelia, Exemplar of Justice(GRN)》という強力な天使たちを、火力と打ち消しがバックアップしていく。準々決勝では三原のゴルガリ・ミッドレンジ、準決勝ではマーフォークと、異なる2つのデッキを粉砕してきた。

 

残る氏族は1つ。されど立つは2人。

たった1人の勝者を、今決めよう。

GAME 1

 

 

決勝戦、最初に唱えられた呪文は藤井の《ベナリア史/History of Benalia(DOM)》なった。

ダブルマリガンを喫した奥田は《ベナリア史》の騎士トークン1体には《裁きの一撃/Justice Strike(GRN)》で対抗するのだが、他にアクションを起こすことはできず。

《豊潤の声、シャライ/Shalai, Voice of Plenty(DOM)》に《正義の模範、オレリア》と瞬く間に天使のコンビが現れると、土地が3枚しかない奥田は投了するしかなかった。

 

 

藤井1-0奥田

 

 

 

 

 

 

GAME 2

 

 

今度はお互いにオープニングハンドでキープとなり、お互いの場に土地が3枚ずつ並んでいく。

最初の呪文の応酬は、藤井の《ベナリア史》に対しての《イオン化/Ionize(GRN)》。奥田は自分のターンではやはり動かずに、4枚の土地を立ててターンを返す。

 

藤井はその4マナを見て悩みながら《ベナリア史》の2枚目へと手を伸ばす。これを奥田は快諾するが、ターン終了時に騎士トークンを《一瞬/Blink of an Eye(DOM)》で除去する。

 

そして静寂の戦場に、《ドミナリアの英雄、テフェリー》を着地させる。しかも《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke(KTK)》と《中略/Syncopate(DOM)》を構えるという、ほぼ万全の構え。

 

だが、その万全は「ほぼ」だった。藤井がここでプレイしたのは《魔術遠眼鏡/Sorcerous Spyglass(XLN)》。指定はもちろん《ドミナリアの英雄、テフェリー》。

 

一気に動きづらくなってしまった奥田は、仕方なく見られている《アズカンタの探索/Search for Azcanta(XLN)》を置いて《中略》を構える。この《中略》は藤井の《アダントの先兵》を打ち消せはしたのだが、本命を隠し持たれているのは明らかだ。

 

とはいえ、奥田はできることをしっかりと行っていく。6マナ目をセットした奥田は《軽蔑的な一撃》を構えながら《再燃するフェニックス/Rekindling Phoenix(RIX)》へと手を伸ばす。そして《イクサランの束縛/Ixalan's Binding(XLN)》を《軽蔑的な一撃》で打ち消すと、ここで値千金の《ウルザの後継、カーン》をドロー。

 

藤井は《輝かしい天使/Resplendent Angel(M19)》こそプレイするものの、土地が4枚で止まっていて思うように動けない。

 

《ウルザの後継、カーン》でライブラリーを掘り進める奥田はここで《再燃するフェニックス》で攻撃し、《運命のきずな/Nexus of Fate(M19)》をキャスト。《ウルザの後継、カーン》のプラス能力で手札に土地を咥えながら、《再燃するフェニックス》を追放する。これで追加ターンで2枚目の《再燃するフェニックス》をプレイできることが確定した。

 

久しぶりに自分のターンを得た藤井。だが盤面はたった2ターンで圧倒的なまでの劣勢となってしまった。5枚目の土地を置いて、長考する。

結局、5枚の土地を置いてそのままターンを返すことに。

 

対照的に奥田のプレイは早い。まず《水没遺跡、アズカンタ/Azcanta, the Sunken Ruin(XLN)》を起動して《ウルザの後継、カーン》を手札に加え、《再燃するフェニックス》1体で攻撃する。この攻撃に対して藤井は《稲妻の一撃/Lightning Strike(M19)》を使うが、返しのターンで除去を引き込むことができない。

その代わりに、《黎明をもたらす者ライラ/Lyra Dawnbringer(DOM)》を着地させる。

 

この《黎明をもたらす者ライラ》を《裁きの一撃》で処理した奥田。だがこの5点のライフゲインによって4/4の天使が場に出てしまう。これは予想外だったようで奥田は思わず「ミスった」とこぼすが、既に場は2体の《再燃するフェニックス》が完全に支配している。

 

土地を上手く引き込めなかった藤井は1ターンに1回しか行動を起こせない。対して奥田は倍以上の土地をコントロールし、ドロー量もほぼ2倍。

 

ここからの奥田は終始冷静だった。打ち消しによるバックアップを行いながら、2体の《再燃するフェニックス》が速やかにライフを削り切った。

 

 

藤井1-1奥田

 

 

 

 

 

 

 

GAME3

 

 

決勝戦、最後のゲームは、お互いに赤白の土地で始まった。

同じ三色同士の戦い、攻めるのは藤井で守るのは奥田なのは変わらない。藤井の《アダントの先兵》を《本質の散乱》で奥田が対応する。

 

続いての《黎明をもたらす者ライラ》には《イオン化》、《輝かしい天使》にも《シヴの火/Shivan Fire(DOM)》と次々と対応していく奥田。だが、《正義の模範、オレリア》を除去することができない。しかも、次のターンには《ベナリア史》が現れて、トークンを生成し始める。

 

ただ構えているだけでは勝てない奥田は、意を決して2マナを構えながら《再燃するフェニックス》を唱える。

 

だがここに藤井は《議事会の裁き/Conclave Tribunal(GRN)》を合わせる。奥田は辛そうな顔でこれを許可し、騎士トークンと《正義の模範、オレリア》の攻撃を甘んじて受け入れる。

 

奥田には次の策があった。まず《轟音のクラリオン/Deafening Clarion(GRN)》で騎士トークン2体を焼くと、藤井のアップキープに《神聖の発動/Invoke the Divine(M19)》。《再燃するフェニックス》を封じ込めている《議事会の裁き》を破壊する。

 

これで《正義の模範、オレリア》が見た目では止まっているように見える。のだが、藤井は《議事会の裁き》の2枚目を持っており、《正義の模範、オレリア》の攻撃が再び通る。しかも今回はお伴として《輝かしい天使》を引き連れた。

 

前のターンに奥田は《轟音のクラリオン》を使用していた。あそこでもし《浄化の輝き/Cleansing Nova(M19)》があるのなら、あえて《正義の模範、オレリア》が残ってしまう《轟音のクラリオン》ではなく、《浄化の輝き》を使っているはずだ。つまり、《浄化の輝き》が飛んでくる可能性は、ライブラリートップからしかない。

そう考えての藤井の意を決した攻めだ。

 

息を呑む、ギャラリー。

と藤井。

 

そして突き刺さる、《浄化の輝き》。

「持ってたか―」

声を上げる藤井。

 

勝負の天秤が傾いた瞬間だった。

 

手札の空になってしまった藤井は、今引き込んだ《善意の騎士/Knight of Grace(DOM)》をプレイ。そしてアクションを起こさない奥田を前に果敢に攻撃を仕掛けていく。

そこに奥田は《神聖の発動》を向ける。対象は《再燃するフェニックス》を追放している《議事会の裁き》。再び蘇る、まさに不死鳥。

 

《再燃するフェニックス》が、藤井のライフを削り始める。藤井が次の《善意の騎士》を引いても、構わずに攻撃を続ける。

《正義の模範、オレリア》には《軽蔑的な一撃》。

《黎明をもたらす者ライラ》に《裁きの一撃》。

藤井の攻めをすべてさばきながら、奥田は《再燃するフェニックス》をレッドゾーンに送り込み続ける。

 

そして。

 

幾度目かの《再燃するフェニックス》の攻撃を受けて、藤井は最後のカードを引き――

チャンピオンを称えるべく、深々と頭を下げた。

 

 

藤井1-2奥田

 

 

 

 

 

 

藤井「《浄化の輝き》、やられましたね。あれ持ってたんですか?」

奥田「持ってました。温存していたんです」

藤井「さすがだなぁ、やられました」

 

試合後、ゲームの流れを一転させた瞬間を藤井と奥田は振り返る。勝者への勝算は、その後も続いた。

 

的確にカードを温存し、終始冷静に、だが時には大胆に攻める。その姿は、実にチャンピオンにふさわしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

LMCC 2018チャンピオンは奥田賢史郎!

おめでとう!